そもそも生産性って何だろう?【生産性向上シリーズ 第1回】

「生産性を上げましょう」と言われたとき、どんなイメージが浮かぶでしょうか。ロボットの導入、記録ソフトの切り替え、ペーパーレス化……。そういった「手段」が先に出てくることが多いのではないでしょうか。

もちろん、それらが役に立つ場面はあります。しかし、手段を導入すること自体が生産性向上ではありません。生産性とは何か、その本質を理解しないまま手段だけを入れても、現場は変わらない。むしろ混乱が増えることさえあります。

このシリーズでは、「生産性向上=ロボット導入ではない」というところから出発し、福祉現場にとっての本当の生産性向上とは何かを、全6回にわたって一緒に確認していきます。

この回のねらい

① 「生産性」のイメージを更新する ── 分数式で本質を捉え直す

② 福祉サービスの特性を知る ── 製造業とは異なる「成果」の定義

③ リーダーの役割を確認する ── 成果を言語化し現場に落とし込む主導役へ

なぜ今、福祉に「生産性」が求められるのか

背景には3つの大きな流れがあります。

社会保障費の限界

財源は限られており、報酬は加算で配分される構造に変わっています。「量をこなす」から「質で応える」時代への転換です。

人材確保の難しさ

福祉人材は慢性的に不足しています。「ここで働きたい」と思ってもらえる職場環境が必要で、処遇改善加算の要件にも職場環境整備が追加されています。

制度の変化

措置から契約へ、情報公開や第三者評価の導入。利用者が施設を選ぶ時代。「今まで通り」では立ち行かない状況が、すでに目の前にあります。

よくある誤解 ── ソフトを入れたのに変わらない

こんなパターンに心当たりはないでしょうか。

ありがちなパターン

「業務が大変だ」

→ 業務ソフトを導入

→ 従来のやり方のまま使う

→ 結局、前より手間が増えた…

ソフトは「器」。中身が変わらなければ成果は変わりません。

生産性向上の本質

① まず「成果」をはっきりさせる

② 次に「やり方」を見直す

③ その上でICTを「手段」として使う

この順番が大切です。

生産性の「分数式」を知ろう

ここがこのシリーズ全体の出発点になる考え方です。

生産性
=
アウトプット(分子)= 果たされた価値・成果
インプット(分母)= そのための手順・プロセス

大切なのはアウトプット(成果)から考えること。
まず「果たしたい成果」を言葉にし、そこに向かうプロセスを整える。

「生産性」と聞いたら、この分数式がパッと頭に浮かぶようにしてください。ロボットでもソフトでもなく、まずこの分数式です。「今回の成果は何か?」「今のやり方はどうなっているか?」──この2つを把握しようとする思考が自然に出てくること。それがリーダーにとって何よりも大事な第一歩です。

この分数式は、第2回以降もずっと立ち返る「ものさし」になります。

福祉の成果はなぜ見えにくいのか

分数式の分子=「成果」が大事だとわかりました。では、福祉における「成果」とは何でしょうか。ここで立ち止まって考えたいのが、福祉サービスの特性です。

1 目に見えない

サービスは形がありません。品質を事前に確認することができません。

2 やり直しがきかない

提供した瞬間に消費されます。製造業のように「不良品を回収する」ということができません。

3 相手と一緒につくる

利用者の状態や気持ちによって、サービスの中身が変わります。

4 人によってばらつく

誰が、いつ提供するかで品質が変動しやすい。だから「型」だけでは品質が安定しません。

では、福祉における「成果」=「果たされた価値」とはどう見るのか。3つの視点があります。

利用者の視点: 安心して過ごせたか、笑顔が戻ったか、自分で選べたか。

支援の視点: その人の人生にどう貢献したか、職員が自信を持って判断できるようになったか。

地域の視点: 家族が安心できるか、地域に受け入れられているか。

「成果」を多面的に捉えることで、自分たちの仕事の意味がより鮮明になります。そしてこの「成果」は、誰かが言語化しなければ、チームの中で共有されません。

だからこそリーダーが現場の主導役になる

成果が見えにくい。数字だけでは測れない。一人ひとりの判断に委ねられる部分が大きい。だからこそ、「うちの成果はこれだ」「うちが果たすべき価値はこれだ」と言語化し、現場に落とし込む人が必要です。それがリーダーの役割です。

経営層の想い・施策

リーダー = つなぎ役

御用聞きでも伝言ゲームでもなく、
組織の狙いと個人の想いが重なる部分を見つけてつなげる

現場メンバーの状況・想い

福祉施設には「文鎮型」の組織が多いと言われます。経営層(トップ)と現場だけで、中間のリーダー層が薄い。経営層が方針を出しても、現場に届かない。現場が困っていても、経営層に伝わらない。リーダーは、この間をつなぐ「主導役」です。

運営

与えられたものを滞りなく営んでいく

・決められた手順どおりに動く

・前例踏襲で安定を保つ

・問題が起きたら対処する

経営

環境の変化に合わせて自ら考え、企てる

・「成果は何か」を自分たちで定義する

・変化を先読みして手を打つ

・限られた資源で最大の価値を届ける

このシリーズで目指すのは、リーダーが「運営する人」から「経営する人」へと視点を広げ、現場の主導役として動けるようになることです。

全6回の見取り図

テーマ(何のために → 何をする) ツール・キーワード
第1回 前提を揃えるために、生産性の本質を知る 分数式、サービス特性
第2回 チームで合意形成するために、事実で捉える 事実vs意見、3M
第3回 本質的な課題を見つけるために、鷹の目で見る 概念化、5マス思考地図
第4回 現場の判断がぶれないために、モノサシを持つ 5つの価値観、場面で語る言葉
第5回 実行できる計画をつくるために、肝所を見つける 3つの階層、行動計画4原則
第6回 現場に定着させるために、回し続ける仕組みをつくる 事例追体験、生産性向上委員会

ワーク:あなたの現場で考えてみよう

アウトプット(分子)= 果たしたい成果・価値

問い:あなたの部署・施設が果たすべき「成果」は何ですか?

例)利用者が安心して過ごせる環境 / 職員が迷わず動ける情報共有

インプット(分母)= そのための手順・プロセス

問い:その成果を果たすために、どんな手順・やり方をしていますか?

例)個別支援計画に基づく支援 / 申し送り・記録 / カンファレンス

まず分子(成果)を言葉にしてみてください。「何を果たしたいのか」が明確になると、分母(やり方)の見直しポイントも見えてきます。

第1回のまとめ

✅ 生産性向上=ロボット・ICT導入ではない。手段の前に、成果とやり方の関係を捉えること

✅ 生産性は分数式:アウトプット(成果)÷ インプット(手順)。「生産性」と聞いたらこの分数式を思い出す

✅ まず分子(アウトプット=果たしたい成果)をはっきりさせる

✅ 福祉サービスは「人と人」── 成果が見えにくいからこそ、言語化が大切

✅ リーダーは成果を言語化し現場に落とし込む「主導役」── 運営から経営の視点へ

第1回の内容を動画でも確認できます。

▶ 動画で第1回の概要を見る(YouTube)

※ YouTubeが別タブで開きます

次回予告
第2回「事実で捉えよう」

第1回では、「成果=分子をはっきりさせることが出発点」と確認しました。では、その成果に向けてチームで動くには何が必要でしょうか。それは「事実」という共通の土台です。第2回では、「事実」と「意見」を分ける練習をします。そして、現場を3つの切り口(ヒト・道具・やり方)で見渡す方法を学びます。

次回までに考えてみてください。
「あなたの部署・施設が果たすべき一番の”成果”は何ですか?」── 言葉にしてから第2回をお読みください。

ご質問・ご相談はお問い合わせページからどうぞ。

福祉経営事務所 infofukushikeiei@gmail.com

「そもそも生産性って何だろう?【生産性向上シリーズ 第1回】」への5件のフィードバック

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