前提
①
個|福祉職員は知的労働者である
情報という栄養を受け取り、花開く可能性を持つ存在
福祉職員は、知的労働者です。
毎瞬間、判断の連続の中で働くプロフェッショナル。
まず、その定義から始めましょう。
「うちの職員は、自分で考えてくれない」
そう感じたことはありませんか?
それは、職員のせいではありません。
原因
環境が、そうさせてしまったのです。
職員は採用のとき、履歴書を書いたとき、面接を受けたとき、志に満ちていたはずです。
「誰かの役に立ちたい」という気持ちがあったからこそ、この業界の門を叩きました。
それがいつの間にか「言われたことだけやる人」になっていく。
これは職員の責任ではありません。環境が、そうさせてしまったのです。
「考えない職員」は生まれたのではありません。
環境が作り出したものです。
では、なぜ環境がそうさせるのか。
そこには「知的労働者」という視点が欠けているからです。
視点の転換
福祉職員は「知的労働者」です。
介護職員・保育士・支援員——一見、身体を使って働く人たちに見えます。
でも、実態を一日だけ観察してみてください。
利用者の表情から「今日は何か違う」を読み取る判断。複数の方の状態を把握しながら優先順位をつける判断。家族の要望と施設の方針の間でバランスをとる判断。——これらはすべて、マニュアルに答えが書いていない「知的判断」の連続です。
知識労働者とは、自らが何をすべきかを自分で決めなければならない人間である。
― ピーター・ドラッカー
「体を動かしているから肉体労働者」という見方は、福祉職員の本質を見誤っています。
5つの論点で、肉体労働と比べてみましょう。
論点
肉体労働者
知的労働者
(福祉職員)
1判断の有無
マニュアル通りに動く
毎瞬間、独自の判断を行う
2情報処理
決まった動作を繰り返す
複数の情報を同時に読み取る
3エネルギー源
体力・筋力
情報・目的・方向性
4成果の測り方
作業量・処理速度
判断の質・関係性の深さ
5学習の性質
手順の習熟
経験から知恵を引き出す(暗黙知)
福祉職員は5つすべてにおいて、知的労働者の特性を持っています。
知的労働者が本来の力を発揮するには、「情報」というエネルギーが必要です。
目的・方向性・判断基準——そういった情報なしには、正しく動くことができません。
あなたの施設で、その情報は届いていますか?
何が起きているか
情報が届かないと、
職員はどうなるか。
情報という栄養が届かない知的労働者は、こうなります。
「自分で判断せざるを得ない」のに、判断の根拠がない。
何が正解かわからないまま、不安の中で毎日をこなすだけになる。
これは「考えない職員」ではありません。
「情報という栄養を与えられないまま、必死に生き延びている職員」の姿です。
では、職員にはどんな情報が必要なのでしょうか。
大きく4つに整理できます。
| 種類 | 内容 | 欠けると |
|---|---|---|
| ① 方向情報 最重要 |
法人→施設の方向性・ビジョン・今年度の目標 | どこに向かえばいいか分からない。共通言語が生まれない |
| ② 対象情報 | 利用者の状態・背景・ニーズの変化 | 画一的なケアになる。個別対応ができない |
| ③ 環境情報 | 制度改正・処遇改善・職場の状況変化 | 先が見えない。漠然とした不安が募る |
| ④ フィードバック情報 | 自分の行動への評価・利用者からの反応 | 成長実感がない。やりがいを失う |
現場で最も欠けているのは、①の方向情報です。
直接処遇とは一見遠い情報に見えますが、これが後から最も効いてきます。
職員の判断基準を形成し、チームとしての一体感を生む根拠になるからです。
解決の方向性
まず、職員を知的労働者として
定義し直すことから。
1
職員を「知的労働者」として見る
管理する対象ではなく、判断する主体として職員を定義し直します。この視点の転換が、組織づくりのすべての出発点です。
2
法人として「学びの場」を整える
知的労働者の成長を、個人任せにしてはなりません。研修・勉強会・振り返りの場を法人が意図的に設計することで、現場の経験が組織の知恵に変わっていきます。
3
情報流の仕組みをつくる
一度届けるだけでなく、継続的に流れる仕組みを整えます。会議の再設計・面談制度の見直し・情報の見える化が具体的な手段です。
▶ まず、ここからやってみましょう
自立型人材は、小さな一歩から育ちます。
- 職員に「判断の根拠」を渡してみる。
「うちが大切にしていることは◯◯です」と一言伝えてみてください。それが職員自身の判断軸になります。
→ 前提②「軸」へ - 「なぜそうしたの?」を「どう考えたの?」に変えてみる。
問い方を一つ変えるだけで、職員が自分の頭で考え始めます。知的労働者への第一歩です。 - 今日の会議に「施設の方針」を一つ持ち込んでみる。
情報が流れる「場」づくりの始まりです。日常の会議が、職員の判断を育てる場所に変わります。
→ 前提③「場」へ
「どこから手をつければいいか分からない」という方は、
ご支援内容もあわせてご覧ください。
