軸|法人の判断基準を言語化する


前提

軸|法人の判断基準を言語化する

ミッション・ビジョン・バリューが、職員の行動を束ねる

「軸」とは、職員が迷ったときに
立ち返れる判断のよりどころです。

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)がその代表。
何のために、何を基準に働くかを示すものです。


「人事評価制度を入れたのに、なぜかうまくいかない」
そう感じたことはありませんか?

原因は制度ではなく、その土台となる「軸」が機能していないことにあります。


実は、軸はすでにある

問題は「ない」ことではなく、
「使われていない」ことです。

社会福祉法人には、法令上の義務として毎年「事業計画書」の作成が求められています。
その中には、理念・基本方針・今年度の重点目標——つまりMVVに相当するものが、すでに丁寧に書かれているはずです。

ではなぜ、機能していないのでしょうか。

事業計画書は年度初めに配布され、その後引き出しの中にしまわれる。
会議に持参されることもなく、判断基準として機能することもない。
——これが「軸なき組織」の実態です。

あらゆる組織において、「われわれの事業は何か」を問うことを怠ったことが、多くの失敗の原因となっている。

― ピーター・ドラッカー

軸は存在します。ただ、機能していないだけです。
では「軸が機能している組織」と「していない組織」は、現場でどう違うのでしょうか。


何が変わるか

「軸がある組織」と
「軸がない組織」の違い

場面
軸がない組織
軸がある組織
1判断に迷ったとき
何でもかんでも上司に聞いてくる。または誰も動かない
「うちが大切にしていること」に立ち返れる
2人事評価のとき
評価制度のための基準になっていて、MVVとまったくリンクしていない
バリューに基づいた納得感のある評価ができる
3新人が入ったとき
「見て覚えて」になりがち。基準が人によって違う
「うちはこういう法人です」と伝えられる
4会議のとき
報告だけで終わる。何を話し合うべきか分からない
目標との対比で議論が深まる
5変化への対応
その場しのぎの判断が続く
方向性に照らして優先順位を決められる
多くの施設で、評価制度だけが先行しています。しかし○×だけで終わらせる評価制度は、現場の本質とは程遠いものになっています。
まして、その基準がMVVとまったくリンクしていなければ、現場は混乱するばかりです。
→ 人事考課制度について  制度より先に軸を整える——これが正しい順序です。

軸の構成要素

MVVとは何か。
3つの問いへの答えです。

多くの社会福祉法人には「理念」があります。それはすでに「軸」の原石です。
その理念をさらに整理するための代表的なフレームが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。

3つすべてを完璧に用意しなければならない、ということはありません。ただ、3つがそろっていると、職員は「何のために(Mission)」「どこへ向かうのか(Vision)」「何を大切にするのか(Value)」を自分で確認できるようになります。判断に迷う場面が減り、自立した動きが生まれてきます。

Mission

私たちは何のために存在するか

組織の使命・存在意義。「なぜこの法人があるのか」という根本の問いへの答えです。

Vision

私たちはどこに向かうか

目指す未来の姿。3年後・5年後、この法人はどんな状態でありたいかを描きます。

Value

私たちは何を大切にするか

行動の判断基準。日々の現場で「これでいいか」を判断するときの拠り所になります。

この3つが言語化されていると、職員は「自分の仕事が法人全体の中でどんな意味を持つか」を感じられるようになります。
それが、前提①で話した「方向情報」として職員に届く、最も重要な第一歩でもあります。


解決の方向性

まず、今ある事業計画書を
会議に持参することから。

1

今ある事業計画書を「使う」

新しく何かを作る前に、すでにある軸を機能させることが先決です。次の会議に事業計画書を持参し、冒頭で今年度の重点目標を確認しましょう。さらに毎月の進捗を「20%達成」「😊」など簡単な形で書き込んでいく習慣をつけると、計画書が生きた道具に変わります。

2

MVVを現場の言葉に翻訳する

理念が「額縁の言葉」で終わらないために、現場で起きる具体的な場面に引き寄せた言葉に変換します。「うちのバリューで言えばこういうことだよね」という対話が自然に生まれるよう、管理者自身が日頃から言葉を使い続けることが大切です。一度作って終わりではなく、日常の会話の中で繰り返し登場させていきましょう。

3

軸を起点に制度を設計する

軸が整って初めて、行動指針・育成計画・評価の仕組みが血の通ったものになります。「何のために、何を基準に評価するか」がはっきりしていない制度は、現場を混乱させるだけです。制度の前に軸あり——この順序が、組織に本物の変化をもたらします。軸が土台にあれば、制度は生きた道具になります。

▶ まず、ここからやってみましょう

軸は、確認することから初めて機能し始めます。

  • 次の会議に事業計画書を1冊持参する。
    冒頭で「今年度の重点目標」を一つ読み上げてみてください。それだけで軸が動き始めます。
  • 「この判断、うちの方針と合っていますか?」と問いかけてみる。
    答えられなければ、それが軸を言語化するきっかけになります。問いそのものが組織を育てます。
  • 職員が判断に迷ったとき、「うちが大切にしていることは何だっけ?」と一緒に考える。
    情報が人を通じて届く「場」づくりの第一歩です。
    → 前提③「場」へ

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