最低賃金と採用単価に、給与表が振り回されていませんか

前回は、処遇改善(加算)という“内側”からの乱れの話でした。今日は、“外側”から。都市部を中心に急騰する最低賃金、そして上がり続ける採用単価。——法人が「こうしたい」と思っても、その通りにいかない。今日は、その外からの圧力と、どう向き合うかの話です。

最低賃金が、下から突き上げてくる

令和8年10月、また上がります

令和8年度の引上げ目安は、東京・神奈川・埼玉が+54円山梨が+56円。目安どおりなら、全国の加重平均は1,176円になります。10月1日から、順次。

※ 引上げ幅が大きいのは、実はBランク(+56円)のほうです。山梨のような地域ほど、下からの突き上げは強く出ます。

最低賃金が、特に都市部で、どんどん上がっています。すると、いちばん下の時給がぐっと上がって、その上にいたはずの人との差が、みるみる縮まる。「最低賃金に、うちの給与表が追いつかない」——そんな“追いかけっこ”が、あちこちで始まっています。

気づけば、非常勤と正職員の差もあいまいに

最低賃金の影響をまともに受けるのは、非常勤・パートの時給です。ここが上がると、正職員との差や、責任との見合いが、だんだんあいまいになってくる。「責任は重いのに、時給の人と、そんなに変わらない」——そんな声も、出てきますよね。

そして、採用単価が上がっていく

人が採れないから、募集の“提示額”を上げる。すると今度は、新しく入る人のほうが、前からいる人より高い、なんてことも起きる。採用のために上げた額が、内側の給与表を、また揺らす。——外の相場に、ぐいぐい引っ張られていくんです。

「上げたくて、上げてるわけじゃない」

ここが、経営のいちばん苦しいところです。最低賃金も、採用単価も、法人が「こうしたい」で決められない。外から、決まってくる。だから、法人の政策が、思いどおりにいかない。ほんとうに、悩ましいですよね。

「処遇改善で埋めればいい」——そうもいかない

ここで、こう考えたくなります。処遇改善加算があるじゃないか、と。毎月の処遇改善手当も込みで最低賃金をクリアしていれば、法律上は問題ない。実際、厚生労働省のQ&Aでも、毎月決まって支払われる加算分は最低賃金の計算に含める、とされています。介護保険も障害福祉も、同じ問答が置かれています(いずれも問1-6)。

ただ、同じQ&Aは、こう続きます。「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」。最賃は給与の本体でクリアして、処遇改善はその上に乗せてほしい、ということです。

ただ、ここで理想論に寄りすぎると、現場が壊れます。最賃を全額、本給で吸収する——できれば、それが一番きれいです。でも福祉は、売上に天井がある。報酬は公定価格で、上げようがない。そこに毎年50円、60円と本給を積めば、人件費比率がそのまま跳ね上がる。法人が、もちません。

だから現実の設計は、こうなります。本給と処遇改善を合わせて、最低時給を確実に超えておく。加算の「本来の趣旨」からは、少しズレるかもしれません。それでも、法人が続かなければ、職員の雇用そのものが守れない。

そのうえで、二つだけ忘れずに。ひとつは、非常勤・パートに厚めに配ること。最低賃金の影響をいちばんまともに受けるのはこの層で、放っておくと正職員との差が詰まります。もうひとつは、「なぜこの配り方なのか」を説明できるようにしておくこと。「加算をもらっているのに最低賃金と同じでは」と聞かれたとき、答えられる法人と答えられない法人では、その後がまるで違います。

じゃあ、どう守るか——やっぱり「軸」

外の力に振り回されないために要るのは、ぶれない“軸”です。「うちは、何に対して、いくら払うのか」。——見ている範囲と、負っている責任。この軸さえはっきりしていれば、最低賃金が上がっても、採用単価が上がっても、「ここは動かす/ここは守る」を、自分たちで決められます。

外に流されて上げるのと、軸を持って調整するのとでは、同じ“上げる”でも、まるで意味が違うんです。

※これは実在の法人ではなく、いくつかの事例のエッセンスを再構成したモデルケースです。

モデルケース:外の変化を、「軸」に照らして受け止めた

ある法人さんでは、最低賃金の上昇で下がつかえ、採用単価も上がって、給与表が崩れかけていました。そのたびに“場当たり”で上げていて、収拾がつかなくなっていたんです。

そこで、「何に払うのか」という軸を決め直して、外の変化は、その軸に照らして調整するようにしました。すると、行きあたりばったりの引き上げが減って、「これは、こういう理由で上げた」と説明できる給与に、少しずつ戻っていった……そんなイメージです。

給与制度の“進め方”を、1ページにまとめました。

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最後に、少しだけ

福祉の現場は、施設ごとにいろんな工夫があって、私も正直、みなさんが何をやっているのか、すごく知りたいんです。

まとめる必要はありません。まとまっていなくて大丈夫です。まとまっていたら、きっと解決しているはずですから。その、言葉にならないモヤモヤのまま、お聞かせください。

いつでも、どうぞお待ちしています。

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